カルロスとは、わりとベタな名前だ

日曜日にカルロスは、少年団の野球の練習に行く
一級河川の河川敷に皆が愛着をこめてスタジアムと呼ぶ野球場があって
それはもちろん実際にはスタジアムなどではなく、渇いた砂地のグラウンドだった

カルロスは、女子たちが、先生と連れ立って視聴覚室に行ってしまった四限目の時間から
野球について考えていた 悩んでいた
教室に残された男子たちは自習を命じられ、今までにない体制に訝りながらもそれぞれに談笑やプロレスに興じた

カルロスはハーフで、学校ではいじめられていたので話す相手も無く
体格は大きいほうなのでプロレスごっこでジャイアントスイングやジャーマンスープレックスをかけられることもなく
ガキ大将のだいちくんに振り回されるチビのかわちゃんが、顔を真っ赤に引きつらせてグルグルと回っているのをぼけーっと見ていた

野球というスポーツは興味深い
ブラジル人の父は車で神宮球場のあたりを通るたびにつぶやいた

なぜ、バットでボールを打つのかな
かわちゃんの回転が10を超えて、顔色が赤から青に変わり始めた頃、突然に疑問が芽吹いた
なぜ?
疑問に思うとどんな当たり前の事にも疑問はべたりと張り付いて、イースト菌を含んでいるみたいに膨らんでいく
カルロスは一週間考えたが、曖昧な未知の感情がこみ上げてくるばかりだった

バットはちんちんで、ボールはなんなの?
ついに昨日、カルロスは誰も言わない真実が聞きたいと、母方のおじいちゃんに聞いた
そんな使い古された隠喩で片付けることはできないよ
とおじいちゃんは優しく諭して飴を呉れた

答えは教えてくれなかった

一晩寝るとカルロスは一週間の悩み事をすっかり忘れて河川敷に向かった
グラウンドにはまだ誰もいなかった
カルロスは野糞をして、そのへんの草でけつを拭いた
糞をどうやって隠そうか、そればかり考えていた

Leave a Reply