ゴールデンウィークのおもいで

甲子園のいか焼きの名物おばさんに、いつからここでという至極シンプルな質問をしたら、
もう11年だという、意外にそこまで長くはない年数を言われ、最低30年強の答えを期待していた私は、
二の句を告げなくなり、イカ焼きちょっとしょっぱいですねと言ってしまった。

まず、こういう場所で売るイカ焼きはビールのつまみにもなるものなので、多少濃い味つけになること。
加えて、ここには関西の人だけではなく全国の地からお客さんがくるので、薄味ばかりではなく、だいたい三段階に味を変えたものを焼いてストックしておくのだが、私を東方から来た人間だと判断し、少し味濃いめのものをわたしたこと。
そして、おばさんは東北の出だから少し濃くなったのかもしれないこと。
そういった説明を、私と全く目を合わすことなくしてくれた。

11年分のプライドを傷つけてしまったと、少し後悔をし、
何かの呪いのように絡みつく青い蔦に、カンカンと照りつける日の光に薄目しながら、
ここが甲子園か。と呟いて私はその場を離れた。

近くの駐車場で、ズボンの裾から覗くくるぶしが、どうにか凹んでいるように錯角しないかと凝視しながらイカ焼きを食べた。
おばさんは関西に出てくるまで、いろんな事があったんだろうな、と想像した。

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