ボーン・インプロヴィゼーション 即興の感想

ジェイソン・ボーンは我々と同じように孤独だ
ジェイソン・ボーンは我々がそうだったように、全能であり
目覚めたそのときから、スチーブンセガールのように、絶対に負けない

ボーンシリーズはジェイソンボーンが自我を獲得してゆく物語である
ボーンアイデンティティーで、フランスの男臭い遠洋漁業の漁船に、一人の男が助けられる
夜の黒い海原に、ゆらゆらと漂っていたところを
男は全身黒の、ビジネスマンも観光客も着ないタイプのスーツを纏っていた
それは銃撃による衝撃をなるべく和らげるように造られたチョッキや、
動きやすくかつ闇に紛れやすい,黒い伸縮性の高い素材によって出来ていた
傷を負った男は、記憶をなくしていた
私は何者なのか、どこから来てどこへ行くのか
母なる海から拾い上げられた子供のように
何も知らなかった
そして自らを追う謎の組織が送る刺客から
何も知らないまま逃げ続けなければならない
彼は強く、次々とそれらをなぎ倒す

ジェイソン・ボーンは我々と同じように無敵だ
しかし残念ながら我々は、彼のように無敵の時をそう長くは過ごせない
大抵は思春期に
自分は全能ではないと知り
社会から送りつけられる刺客に敗れ続ける
彼、ジェイソン・ボーンは
我々がそうありたかった
孤独を孤独のままとして預かり
いつまでも自らの自己同一性に挑み続ける
勇ましい姿なのではないかと、全能ではない私はうらやましく思った。

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