①天ぷらの衣だけでいいからそれを沢山集めてきてください②洗濯ばさみをおかあさんと呼んでみてください③天ぷらの衣を近所の小学校のプールに浮かべて眺めてください④去年の今頃は何をしていたか思い出してください⑤富士宮やきそばって普通のとどう違うんだっけと実家に電話して聞いてください⑥くるぶしから腿の真ん中くらいまで緑に塗ってください⑦そこにちょうちんの明かりを当てて冬の訪れを実感してください⑧この辺で一番偉いと思われる人の家に行き、弟子にしてもらうまで門の前に座り込んでください⑨ああなんか自己嫌悪だ
新しい年はあっけなく訪れた。餅を食べ、おせちを食べ、親戚に挨拶する。無職でばつが悪い。働いていることに価値があるのか、働いていないことが無価値なのか。今年は料理学校に行くと決めた。何事にも遅すぎるという事はない。いや、「何事にも」とはいささか度が過ぎる。だから何だ。今年こそ人生を立て直すのだ。 XXに初めて会ったのは友人の結婚式だった。その時は特に印象に残らなかった。後日その夫婦から食事の誘いを受けたので出掛けるとそこにXXがいた。XXは積極的に話しかけてきた。まだ勤務して浅いとはいえやはり
冬なので、絶望しております。外泊が続いておりましたが、友人が旅行に行った土産を送ったので受け取れというので、久方ぶりにとぼとぼ帰宅いたしました。しかし拙宅は筆舌尽くせぬ惨めなあばら家でありまして、窓はそれ自体が氷のようであるし、壁は断熱材が擦り切れて風を防ぐ用しか果たさない。せんなしと、毛布に包まり寝転んで、今日はどんな文章を作り載せようかなどと考えておりましたが、寒さに負け、そのまま眠ってしまいました。目が覚めて、ああ寝てしまったと思って窓の外を見るとまだ明るく、庭先をちょろちょろと猫が横切
何とも学校の先生らしいとXYは思った。そして自分もよく読書をする旨のメールを送った。そんな当たり障りの無いやりとりをしばらくの間続けた。 XYの人生において無価値であった年が終わる。しばらくぶりに働き始めた工場を辞めた。友達と組んだバンドは空中分解。来年は何か変わるのだろうか。期待しても無駄だということは知っている。しかし未来における具体的な希望などあるはずがなくそういう類の希望を抱く程度のことは許されてもいいだろう。 新しい年がやってくる。先生をデートに誘った。一月三日までは失礼だと思い1
茹で置きで有名な安そば屋に安山菜そばを食いにぶらりと行ってきた。その330円(安い!)の山菜かわかめか、そばかないしはうどんか選べるよという意味の事が書いてある食券を購入し、カウンターにひらり置いて当然の顔でそばでと店主に伝えた。店主は半分寝ていたところを漸くおきて、茹で置いてあったそばにつゆをかけて、タッパーに入った山菜を処分とばかりに山盛りその上に投入してわたしにくれた。少し饐えた臭いのするそばを持って席につき、臭い消しになればと多量の七味をふりかけもさもさと食った。なぜかうどんの切れ端が
タモリのまねをする。虚しい。私は私が私でなく私の形をした私以外のなにかなのではないかと疑う。まさか、そんなはずは。冬の日のニューヨークの道に漂う下水からの煙が、煙でなく、皆の小便や糞やげろの混じった汚水が蒸発した水蒸気であるのを思い出してみるといい。君は、うわ。と思うだろう。そして喉が渇いて角の自販機でコカコーラをもとめるが、あいにく売り切れで。しかたなくコカの入ってないコーラを購う。その聞いたことも無いブランドのコーラは、さっき思い浮かべた汚水のようなにおいがする。工場ではベルトコンベアーの
限りなく白に近いジーンズに、股間に汗染み、ウィンドブレイカーの上にスカジャンをはおり、農協で貰ったキャップにティアドロップのサングラスをしている。酒と寒さのせいで常に頬は赤く、にやけ顔の歯は汚い。いつも警備員の持つような赤色に光る棒を持ち、我々が思いもよらぬような声で鳴く。筑波山神社が初詣で賑わうなか、入口付近の土産物屋の倅である彼もこんな時には働く。気持ちが高ぶると道の真ん中に立って、交通整理のまねごとをする。頼まれもせぬその交通整理は、周囲に怒りの感情と酒の匂いを振りまいた。紅潮した彼の顔