あるXYの記録

 新しい年はあっけなく訪れた。餅を食べ、おせちを食べ、親戚に挨拶する。無職でばつが悪い。働いていることに価値があるのか、働いていないことが無価値なのか。今年は料理学校に行くと決めた。何事にも遅すぎるという事はない。いや、「何事にも」とはいささか度が過ぎる。だから何だ。今年こそ人生を立て直すのだ。
 XXに初めて会ったのは友人の結婚式だった。その時は特に印象に残らなかった。後日その夫婦から食事の誘いを受けたので出掛けるとそこにXXがいた。XXは積極的に話しかけてきた。まだ勤務して浅いとはいえやはり職業柄なのか人に接する態度が柔らかった。
 「XYさんは何をしているんですか?」
 友人の顔が一瞬固まったが、無職であることに恥じらいなど感じていないので堂々と
 「無職です」
 と答えた。

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